2006年8月9日水曜日

2006.8.4-6 EVENT NATSUKOI LIVE SR REPORT 34SI

2006.8.4-6 大平町なつこい 34SI






2006.8.4-6 EVENT NATSUKOI LIVE SR REPORT 34SI


今回は大平町なつこい祭のSRアシスタントとして参加させていただきました。内容としては、2日間通しでの大規模な野外イベントで、高校生バンド選手権やダンス選手権、ファッションショー、吉本興業のショー等がメインの演目でした。
野外会場は野球場内に仮設ステージを設けたもので、会場が大きいために、遠くまで音が届くように考えて設置する必要がありました。
まず、仕込み日である4日は3時過ぎ頃からセッティングを開始しました。機材セッティングの順序を簡単に並べてみると、
① スピーカおよび、アンプの設置
イントレ上にメインのスピーカをLRで4つずつ、計8つを組み、イントレの脇にアンプラックを設置した。スピーカの組み方はFig.1(図は下手側の場合)に示す。
このとき、スピーカ内のホーン角度を上側に大きく開くようにすることで、より遠くまで音が伝達されるようにすることができる。
また、公演前日の仕込みだったので、スピーカには慎重に養生する必要があったため、ブルーシートを用いて養生した。
アンプは下手に3台で、そのうちの1台はサイドモニター用に用い、2台がメイン用、また上手には5台のアンプを設置し、2台がメイン用、1台がサイドモニター用、2台がフットモニター用として用いた。
② マルチケーブルの位置決め
下手側に8対を一つ、上手側に8対と16対を一つずつ用いた。
下手は、マイクを頻繁に出し入れする必要があるために、SM58を2つ(マルチ2ch分)確保した。
上手には主にスピーカ用に用いる(卓からのOUT)ための8対と(フットモニターはマイクの線と混ざらないように上手から出す)、バンド演奏の時の卓へのIN用に16対を用意した。
また、上手下手に一つずつ、連絡用のClearCOM用のchを確保した。

4日は以上の作業を行い、翌日の本番の日に備えました。
 5日は10:50より本番が開始されるので、7時には会場入りし、セッティングを開始した。まず早急にやらなければならなかったのが、
① 電源の確保
工事用発電機により電源を確保した。工事用発電機は、別名ドカジェネとも呼ばれ、ガソリンエンジンにより小容量の電力を得る発電機である。また、ドカジェネとは別に、電源車を用いる場合もあり、これはドカジェネと比べ、音が静かで安全であるようだ。発電機を用いてPA/SRを行う例は結構あるようだが、発電機で発生させた電圧は家庭などに供給されているものよりも、波が不安定である場合があるようで、それを安定化させて用いるようである。例として、三相交流をダイオードで直流にして使用するなどしているようである。三相交流による送電は、単相交流によるものと比較すると、以下のような利点がある。
ⅰ)電線一本あたりの送電電力が大きい。
ⅱ)同じ送電電力ならば、電線の質量を低減できる。
ⅲ)三相交流から単相交流を取り出すことができる。
ⅳ)三相交流からは回転界磁を容易に得られる。
三相交流を全波整流すると、非常に質の良い直流が得られるようだ。
電源確保の際、照明電源から電源を得た事もあり、そのコンセントはいつもホール等で見かけるようなC型ではなく、T型であった。T型コンセントは、主に舞台照明に用いられ、250V・20Aの差込プラグである。しかし、平成3年に、T型250V20Aの差込プラグを100V機器に使用することは、「危険が生ずる恐れ」があるものとみなす、とされ、事実上禁止になった。しかし、多くの照明器具がこのT型コンセントに対応していたために、現在でも多くの照明器具がT型コンセントにより電源を確保しているようである。今回の現場では、このT型コンセントによって電源を確保した。
② ステージ上のセッティング
Fig.2にステージ上のセッティング図を示す(矢印は、翌日のセッティングで移動した事を表す)。A,Bは8対マルチボックスを、Eは16のメスマルチボックスを示している。
ここで、フットモニターはすぐに下げることができるように、マイクのケーブルと混同しないように注意して取り扱った。これを防ぐために、マイクが1本で済む場合などは、フットモニターと逆である下手から出すなどの工夫をした。ボーカル用マイクは計5本用意し、それぞれフットモニターの前と、上手にいつでも出せるように一本セッティングした。また、この日は高校生のバンドコンテストがあったので、Eのマルチの回線も早急に確保した。
弦楽器は全てDIを用いて、ラインで処理した。
また、ワイヤレスマイクを使用する予定があったので、2波はワイヤレスSM58用、2波はヘッドセット用、残り2波は予備として、計6波用意した。予備は使うかわからなかったが(結果としてはワイヤレスSM58を1本追加したので使用することになったが)、使わないにしても、電波は確保しておかなければ、他の場所で電波占有されてしまう可能性があるので、ワイヤレスを用いる時には注意が必要である。

ステージ上のセッティングが終わったら、サウンドチェックをした後に、本番開始となりました。タイムスケジュールでは、開会の挨拶が済み次第、すぐにバンドコンテストがありました。一バンド当たり、大体15分の持ち時間で、計26ものバンドが入れ代わり立ち代りで進めていったので、バンドとバンドの間のステージングが大変でした。次々にこなしていかなければ、時間的にも押してしまうために、いかに素早く準備ができるかが大事なポイントになりました。特にドラムのマイキングなどは、セッティングが毎回変わるために、効率よくマイキングをすることを求められました。工夫としては、オーバーヘッドのL,Rのマイクやスネアのマイクは、前のバンドが終わったところで、下げておき、次のバンドが準備できたら元の位置に戻し、そこで微妙な高さや向きの調整をするといった方法で時間を短縮させました。
この頃はまだクリアカムの使い方にも慣れておらず、どのタイミングでステージに上がってよいかもつかみきれてなかったので、神経を使いました。ステージングのスタッフは下手・上手の二手に分かれて、体力を気にしつつ、効率よく進めていかなければなりませんでした。
バンドコンテストが進んでいく中で、グランプリを受賞する事になるバンドでアクシデントが起こりました。演奏中にギターの音がでなくなるというアクシデントです。ギターのエフェクターからの音がDIでパラにして一方を卓へ、一方をギターアンプ(マーシャル)へ送っていたのですが、DIでパラにするとどちらへも信号が行かなくなってしまうという状態でした。演奏中にケーブルを変えたりなど、色々試してはみましたが、中々復旧せず、結局ギターアンプへのケーブルを引き抜いたところで一応卓側に信号が行きました。しばらくの間、そのトラブルの原因がわかりませんでした。ただ、DIでパラにしなければ信号が流れたことから、原因はDIかギターアンプにあると思われます。しかし、なぜあのバンドだけがこういったトラブルに見舞われたかは、未だにわかっていません。他のバンドでは接続を元に戻しても、正常に音が出ました。
こういった、音が出なくなった時の素早い対応というのは、瞬間的に問題を見つけ出すのは中々困難なことで、冷静に順序だてて対処するように心がけなければならないと思いました。考える際に、『どこからどこまでは大丈夫なのか』、『どこからが駄目なのか』といったように、部分的に問題箇所を区切って考える事で、迅速に対応することができると思いました。
バンドコンテストが終了すると、いよいよ吉本興業のショーの順番になりました。一日目はトリがレイザーラモン氏だったのですが、直前まで現場に到着しておらず、マイキングのことが心配でした。結局、事前に用意しておいたヘッドセットを使用することになりました。それ以外は全てワイヤーのマイクを使用しました。これは下手側から二本出す事で対応しました。このとき、漫才などの時のマイキングは、二人が少し向き合うような感じにマイクを開いてセッティングするようにしました。Fig.3にマイキングの様子を示します。
吉本興業のショーは日に四組の人たちが出演したのですが、入れ代わるときに、素早くFig.3のようなマイキングに直す必要がありました。出囃子が出ている間に素早く綺麗にセッティングする必要があったので、プレッシャーもあり、緊張しました。
ヘッドセットを出演者に装着するのも音声の仕事だというのは、今回知りました。良い経験ができたと思います。ヘッドセットのことで一つ気になったのは、ヘッドセットのサウンドチェックの時に、音が少しプツプツ言っていたような気がしたのですが、自分の解釈ではハンドのワイヤレスとの電波干渉のせいかと思うのですが、どうなのでしょうか。
吉本のショーが終わると、グランプリバンドの再演奏がありました。このバンドは先ほど、トラブルがあったバンドだったので、演奏前のチェックは特に慎重に行う必要がありました。ここでもやはり、DIからパラで出力しようとすると信号がいかなくなるという状態になりました。従って、ギターアンプの方のケーブルを抜いて演奏するという方法をとりました。
その後は花火がありました。観客が花火を観ている間に、翌日使用しないと思われる機材の片付けをしました。翌日はバンド演奏はないので、Eのマルチにささっていたボーカル以外のマイクは全て片付けました。こうして、数日間通しての公演の時などは、随時必要でない機材を片すという気配りをすることが大事だと思います。横目にですが、間近で花火が見れて良かったです。

 6日は、前日に大体のセッティングは終わっていたので、8時半頃から開始されました。セッティングでは、奥のサイドのモニターをイントレ内に配置し(この日はダンスがあったので、ステージを広くする必要があった)ました。
 この日のスケジュールはダンスとファッションショーの後に、ソニーミュージックのオーディションがあり、前日に引き続き、吉本のショーという順でした。
本番中は、私は主に下手で作業していました。ダンス中は、マイクが必要になるグループは少なかったので(ワイヤレスのSM58を一本出したが)、前日のバンドの時よりも幾分か楽でした。ダンスとファッションショーが終わると、少しの間休憩をもらえたので良かったです。その間に、次からの演目がやりやすいようにセッティングを見直すことができました。休憩中などにもBGMを流すといった配慮を怠らないのは勉強になりました。
 オーディションはカラオケ形式で行われ、それぞれがワンコーラスずつ歌ったわけですが、このときは体力的に辛かったです。日差しが強くて、下手には休める日陰もなく、オーディションは入れ代わり立ち代りだったので大変でした。
 基本的にカラオケ形式(又はアカペラ)で歌う人たちは、下手から一本のマイクを出すだけでよかったので、気にかけることといえば、スタンドを使うか、ハンドマイクかということと、ケーブルがちゃんと捌けているか、といった点でした。
 オーディションでいくつか手際の悪くなってしまったところがありました。ギターを用いての歌唱だったのですが、エレアコの音をDIからラインでもらうのに、音が卓の方へ行かないというトラブルがありました。私はすぐにこちら側のミスかと思い、DIの接続やマルチのchが間違っていないかと探ってみたのですが、どこがトラブルの元なのかを見つけられず、焦ってしまいました。結局、出演者側のギターのボリュームが下がっていたという単純な理由でした。
 この場合、出演者はプロの演奏者ではなく、アマチュアなので、アーティスト側の問題まで考えなければならなかったことが、私の頭にはありませんでした。そのせいか、対処が遅れてしまいました。
 オーディションが終わると、すぐに吉本のショーの準備でした。事前に入っていた情報では、四つの組のうち、三つはスタンドを用いたマイクでやるとの事でした。一つ目と二つ目のグループは下手から二本のマイクを出しました。このつなぎ目は、同じマイクを使用したので、特に大きなトラブルはありませんでした。三つ目のまちゃまちゃ氏は上手からマイクを出しました。このとき、まちゃまちゃ氏のネタでマイクを投げるというのがあったので、投げてもいいように古い58を事前に用意しました(結局投げなかったのですが)。
そういった事前の下調べによる配慮は非常に大事だと思いました。事前にどういうネタなのかがわかっていれば、マイキングをするにも予想立てて考えられます。
 四組目のインパルスは本当に直前までマイクがわからず、ヘッドセットの用意もしていたのですが、結局スタンドのマイクで大丈夫とのことでした。三組目と四組目の間が短くて、上手に下ろすマイク、下手から出す二本のマイクを手際よくセッティングしなければなりませんでした。
 本番中は特にアクシデントも無く、成功だったと言えると思います。後はどれだけ手際よく搬出を済ませられるかでした。搬出も先のことを考えながらやる必要がありました。今回のような仮設のステージでは、音響以外にも当然、照明なども搬出があります。それらとうまく連携をとりながら片付けなければ、迷惑にもなってしまうので、注意が必要でした。電源を全て落としたら、照明がイントレに上りやすいように、アンプ周りを片付けるといった配慮をしながら作業をしなければなりませんでした。搬出は9時半頃に終了しました。
 以上、三日間のSRアシスタントをさせていただいたわけですが、今回は夏の野外ということもあり、非常に体力を使いました。常に水分を補給しながらの作業でした。ですが、三日間で色々なことを知ることができました。クリアカムを使ったのも初めてでしたし、ヘッドセットを出演者につけるという貴重な体験もできました。何よりも、大きなイベントをいろんな人の力を借りながら作り上げたというのが、非常に充実感がありました。
 こういったイベントというのは、スタッフが全員一丸となっているというのが非常に印象に残っています。音響スタッフの中での連携だけでなく、照明や進行などとも連絡を密にすることで、より効率よく、スムーズに、そして楽しい現場にできることを身を持って知りました。スタッフみんなが『より良いステージにしたい』と思っているのが、非常に伝わってきました。それが今回、一番勉強になったことだと思います。
 暑い現場で、非常に大変でしたが、その分非常に良い経験ができました。三日間、本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

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